人気ブログランキング |

タグ:宇江敏勝 ( 3 ) タグの人気記事

本の備忘録



ここ一ヶ月は自転車通勤があまりできないかわりに通勤時や出張の移動時にけっこう本が読めたので備忘録として。

凍 (新潮文庫)
沢木耕太郎が山野井泰史・妙子のヒマラヤのギャチュンカンへの挑戦を聞き書きした山岳ドキュメンタリ。今更だが(こんな本が出てるの知らなかった・・・)とても良かった。ルポルタージュで作者というフィルターがとてもうまく作用した稀有な例ではないだろうか。自由って、やっぱり獲得するものなんだなあ。

アマゾンの悪魔
人里離れたアマゾンの奥地で、停滞を強いられたり、道に迷ったりすると人はどのような行動をとるか・・・。子供の頃からアマゾンには惹かれていた。仮面ライダーアマゾン、アマゾネス等々。そして本の密林、いや、いまではなんでも取り扱う物欲の森、amazon。話しをこの本に戻すと、読み始めは人名がたくさん出てきて(ご親切に人名は太文字になっている)なかなかとっつきにくいが、どうやら二つのグループが別個にアマゾン奥地で行動しているのがわかってくると、話にぐっと引き込まれてしまう。時の流れに身を任せて様子を見ているだけでは前には進まない、機をうかがって行動に移らなければならない。タイミングが大切。
アマゾン関係では高野潤のアマゾン源流生活をはじめとするエッセイも必読。ちょっとぎっちょのワールドミュージック専門誌Latina連載中のエッセイもいつも楽しみにしてます。


熊野修験の森―大峯山脈奥駈け記
最近ちょっとはまっている宇江 敏勝が記した大峯奥駈け体験記。それ以外にも滝打ち?(滝に打たれる修行)、断食など様々な修験道の修行のルポも。熊野側から入山していつかは行ってみたいロングトレイル。最近また少し話題になっている女人禁制についても自分なりに考えてみようと思ったが、うまく考えがまとまらない・・・
蛇足だが、炭焼日記―吉野熊野の山からって、漫画にもなってるのね。

ロマンポルノと実録やくざ映画―禁じられた70年代日本映画 (平凡社新書)
70年代プログラム・ピクチャーの徒花、日活ロマンポルノと実録やくざ映画(主に東映)を作品ごとに紹介した本。やくざ映画その他に関しては従来あまり注目されていない作品にも光が当てられていて面白かったが、ロマンポルノに関しては少し物足らない。やはり名著官能のプログラム・ピクチャー―ロマン・ポルノ1971-1982全映画 (ブック・シネマテーク 6)を超えるものはなかなかでない。ロマンポルノの名作も実録物の傑作「仁義の墓場」もDVD化されている今は、これらをなかなか見ることのできなかった90年代に比べれば恵まれていて、禁じられたというタイトルは少々大げさだが、スクリーンでこれらを見る機会については、80年代ならば新宿昭和館や亀有名画座などで気軽に見ることができたが、いまは、ミニシアターやフィルムセンター、あるいは映画祭などの特集上映しかないのが実情(やくざ映画に関しては浅草名画座ががんばってるけど・・・)。上映の多様性ということでは明らかに後退が進んでいる。シネコンってなんかつまんなくないですか、マックみたいで・・・。
by mobydick67 | 2009-11-15 10:12 |

山の仕事

以前読んだ「山びとの記」がとても良かったので、


宇江敏勝 「炭焼日記―吉野熊野の山から」


を読んだ。こちらも名著。

炭焼き、造林小屋で記された山の生活の記録。紀州版「ウォールデン」(ちなみに様々な訳がありますが私は講談社学術文庫版を愛読しています)。朝早くから仕事をして、夜は焼酎をくらって寝る。シンプルな暮らし。暗い衝動。低い目線からみた山の姿。孤独。

ほとんどが仕事の内容、身のまわりのできごと、自分の心を書いた日記のような文章だが、そんななかで慎ましやかな意見が述べられているところがあったので少し長いけど引用してみる。

「あれがわれわれの作品だ、と、私はしばし足をとめ、植林地を眺めながら、三年間の自分たちの仕事の手応えを実感する。むしろ私の作品という思いのほうが強いくらいである。私は現場の最古参で責任者でもあるからだ。山林は誰かのものであっても、仕事そのものは、自分たちのものだと、私は思っている。私の脳裡には、完成された人工林のイメージがある。その完成図を目ざして、仲間たちと語らい、あるいは経営者にたいしても注文を出していかなければならない。
 ところで遊山し、鑑賞する対象として、私は自然林を愛好している。あるいは生物のバランスをたもつうえでの、いわゆる環境保全という点で、自然林を破壊せずに、これを残していかねばならないと考えている。
 しかし生活の必要を満たすという面では、人工林は自然林にくらべてはるかに有益なのである。たとえば一戸の住宅に必要な建材を得るために、その原木を自然林に求めるとすれば人工林の何倍かの面積の山林を裸にしなければならない。だから生産性の高い人工林を育てるということは、いっぽうではその分だけ、天然林が破壊から免れるはずなのである。しかし現実には、利益追求のための人工林化がみさかいなく進んで、自然林が濫伐され、激減しつつあるというのも事実だ。森林資源の保護と利用といううえで、なんらかの規制と計画性が必要だと、私は思う」

1976 年、今から30年以上も前に書かれた文章だが、現在においても正鵠を射ている。関係ないかもしれないが、先日触れたイルカの映画があらためてとても下品なものに思えてくる・・・・
by mobydick67 | 2009-10-26 20:15 |

山びと


 少し前に本屋であれこれ見ているときに「中公新書の森 2000点のヴィリジアン」という中公新書通巻2000冊出版記念の冊子が無料で置いてあったので、もらって帰りました。ページ数も普通の新書と同じくらいあり、読み応えあります。若い頃は新書なんてなんか教養主義の権化のようで敬遠してましたが、最近はいろんな分野の新書(例えば山、サッカー、映画、旅行記、冒険記の類)もちょこちょこ読むようになったので、色々な人(主に知識人)による「私のおすすめ中公新書!」がたくさん紹介されているこの冊子はとても面白かった。


f0194599_0173838.jpg



 その中で何人かの人が挙げているいわゆる名著といわれるものが何冊かあるのですが、その一冊にとても興味を惹かれた本があったので購入して読んでみた。


山びとの記―木の国 (中公新書 (578))

 
炭焼き、造林など山林を仕事の場としてきた著者による山暮らしの記録です。仕事内容、生活、従事する仲間の様子などが詳しく淡々と描写されています。これまで読んできた同じような山暮らしの本は取材者による聞き書きが多く、一人称で語られる山の暮らしの様子はまた違う味わいがあります。本の舞台となるのは紀伊半島の果無山脈・・・・どうして山の地名ってこんなに味があるんですかね。
 
 中上健次原作「火まつり」という映画で北大路欣也演じる主人公は紀州で林業に従事しているという設定で、映画には木を切り倒したり山仕事のシーンもいくつかあったはず。映画は何か雰囲気だけがからまわりしていてあまり面白くなかったが、私の好きな、森下愛子や川上麻衣子もチョイ役ですが出演していて、太地喜和子をはじめとするキャスティングはすばらしい。そういえば、海の漁師を主人公にした映画はけっこうありますが、山びとを主人公にした映画ってあまりないなあ・・・・・



秩父事件―自由民権期の農民蜂起 (中公新書 (161))も読まないとね。
by mobydick67 | 2009-06-29 13:15 |