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オオカミ、あるいは犬と暮らす


ひさびさに読んだオオカミ関連の本。


哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン

オオカミに関する本は、その野生での生態について書かれた本が多いが、この本は哲学教師である著者がオオカミを犬のように普通に室内で飼った(この言い方には語弊があるかもしれないが、要するに自然に近い放し飼いではなく、ましてや檻に入れた状態でもなく近郊の家で普通にペットの犬を飼うようにして飼ったという意味)体験が書かれている。ちょっといままでにない話。


日本語訳版には写真がないが、洋書の表紙にはそのオオカミ、ブレニンの写真が表紙に使われている。

The Philosopher and the Wolf: Lessons from the Wild on Love, Death and Happiness
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オオカミを一つの種として論じるのではなく、ある個体とパートナーとして一緒に暮らしていくなかで考えた愛、死、幸福をはじめとする様々なテーマに関する考察が綴られている。それらの考察は、オオカミではなくても犬(猫でもかまわないかもしれない)と一緒に暮らしていても日々頭を悩ませるテーマ、すなわち、躾はどうするべきか、食べ物(「餌」)はほんとうにこれでいいのか、性については(例えば避妊手術や「種付け」などについて)?といった身近なことから始まる。またそれらの主題は、オオカミ(あるいは犬)の話だけにとどまらず、そのパートナー(「飼い主」、「主人」?この本を読むと動物との関係を示す言葉に敏感になってしまう)である人(この本では時に「サル」という「代名詞」に置き換えられたりもする)にも同じように自分自身のこととして考えなければならない主題として跳ね返ってくる。このあたりがこの本が哲学しているところで、いわゆる机上の論理の哲学ではない所以だ。そういう意味では最近テレビにまで取り上げられて話題になっているマイケル・サンデルのこれからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学と通じるところもあるかもしれない。

ただこの本で一番大切な主題は「正義」ではなくて、「自由」とは何か、ということに尽きるだろう。オオカミが普通に町で犬のように人と暮らしていくにはオオカミの「自由」はある程度制限されるし、飼い主もかなりの「不自由」と「虚偽」を強いられることになる。では「野生」が自由なのか?犬ならどうなんだろう?人間なら?子供と犬は何がちがうのか?否が応でも考えることになる。

うまく本の内容を伝えることができないのがもどかしいけど、決して真面目くさった本ではなく、オオカミと暮らした体験記としてもとても面白い。


たかがペットかもしれないが、たくさん考えることはある。

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うちのオオカミももう10歳・・・
by mobydick67 | 2010-09-12 11:50 |
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