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ヘルツォークの山岳ドキュメンタリーと・・・

「輝く峰 ガッシャ―ブルム」
「バケのカムバック」

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メゾンエルメス10Fのル・ステュディオで上映中(土日祝のみ、要予約)


「輝く峰 ガッシャ―ブルム」はヘルツォークがメスナーのガッシャ―ブルム山行を撮ったドキュメンタリー。ただし、74年のペーター・ハベラ―との8000m峰へのアルパインスタイルでの世界発登頂、無酸素初登頂時の記録ではなく、84年のハンス・カラマンダーとの再登頂、Ⅰ、Ⅱ峰縦走時の記録。ヘルツォークはベースキャンプまでしか随行していないので、主にベースキャンプまでの道中とベースキャンプでのメスナーへのインタビューで構成されている。肝心のベースキャンプ以降は、メスナーとカラマンダーに預けたカメラによるわずかな記録しかなく、手に汗握るようなアルパインシーンは全然ない。そういう意味では以前ここにも書いたヘルツォークの「彼方へ」というへんてこな山岳非ドキュメンタリー映画同様、山岳映画としては何か物足りないぼんやりとした印象の映画。そしてここでもまた、平凡な「巨匠」ヘルツォークは、他の映画で怪優クラウン・キンスキーとの関係同様、怪人、奇人、超人、お化けのメスナーに煙にまかれ、すっかりのまれていて、映画全体をはじけるメスナー節が覆い尽くしている。見ているうちにメスナーの顔がクラウン・キンスキーに見えてくるから不思議。

もう一本、『バケのカムバック』という併映の短編が実は秀作。パケという年老いた登山家がかつてのガストン・レビュファとのミディ南壁初登頂を思い出しながら、若い登山家と共に再訪、再登頂する姿を撮ったファンタジックで牧歌的なドキュメンタリー。監督は「音のない世界で」で、聴覚障害のある子供たちが、音に触れ、音楽を獲得していく過程に寄り添った秀逸なドキュメンタリーを撮ったニコラ・フィリベール。在りし日のレビュファのコミカルな記録映像や、登攀中のビレイ時に通りがかった(登りがかった?)トシオ・サトウという日本人クライマーとのユーモアに満ちた会話が挟み込まれている。山と記憶の根源的な関係に迫った美しい一編。(どこのだれだか知らないけれどトシオさん、この映画のこと知ってるかな?)週末の楽しい山歩きのあとで、一日を締めるのに最適な1本かもしれない。


山、歩きたいな・・・
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by mobydick67 | 2013-03-09 15:25 | 映画 | Comments(0)

阿鼻叫喚

新世紀読書大全 書評1990-2010


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特殊映画評論家 柳下毅一郎が20年間、様々なメディアに書き散らした書評を集めた大著。タイトルと副題 A User's Guide to Pandemonium(阿鼻叫喚のユーザーズガイド) はJ・G・バラードの千年王国ユーザーズガイドをもじったもの。その書名に偽りはなくエロ、グロ、シリアル・キラーなどサブカルからハイカルチャーまで、古今東西の奇書を総ざらえ。これさえあれば当分は読書リストに困りません、というか、取り上げられている未読書を読むのに何年かかるやら・・・・考えただけで鼻血出そうです。

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by mobydick67 | 2013-03-04 18:48 | | Comments(0)

銀座 三原橋 シネパトス

銀座のはずれにある古い映画館が3月末で閉館になる。

銀座 三原橋地下 シネパトス

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東京に出てきた80年代半ばからすでにあったけど、45年も前からあったとは知らなかった。当時は確か2スクリーンだけだったような記憶があるが現在は3スクリーン。ここでしかロードショー公開されないB級作品を昔はよく見に来た。イーストウッド大先生の『トゥルー・クライム』がここでひっそり単館ロードショーされたのももう随分昔のこと。今はないけど昔は大人のオモチャ屋が隣にあり、今でもある横のカレーコーナー三原で映画のついでにカレーもよく食べた。

なんとなく場末感漂う雰囲気が好きだった。

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最近あまりないネオンサイン。「ニューシネマパラダイス」(嫌いだけど)に見えないこともない。

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お正月は松竹本社のお膝元ということもあってか、連日寅さんがかかってた。

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今は館外に歴代の舞台挨拶に来た人々の色紙が外に飾られている。

60年代、性と永続革命

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70年代の青春。

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80年代、性春の2大巨匠。ナイスですねえ。

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ちょっと寂しい・・・・
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by mobydick67 | 2013-03-04 18:28 | 映画 | Comments(4)

狼男は嘘つき?

ときどきここに読書感想文めいたものを書いているけど、文句なしに面白かったり、目から鱗!みたいな本なら感想も書き易いし、またそうでない本ならわざわざ面白くないと書くまでもないのでほっておけばいいが、そのいずれでもなく、評価の難しい本というのもあって、そういう時は思ったことを書いてみたいけど考えがうまくまとまらないため、取り上げるのを躊躇してしまう。この本もかなり前に読んだけど、評価が難しい一冊。

狼の群れと暮らした男

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内容はズバリ、タイトルどおり。作者の一人ショーン・エリスは田舎で育った幼少の頃から野生動物が好きで、それが高じてイギリス海軍除隊後、アメリカ、アイダホ州の国立公園で一人でオオカミの野生の群れに入って2年も一緒に暮らし、その後その経験を活かして、オオカミの保護、飼育、犬の調教などに携わっている、というお話。


「オオカミと暮らす」と書くのは簡単だけど、実際に檻の中でエリスと野生ではない狼が一緒にいる映像のインパクトはすごい。




で、期待も高まる訳ですが・・・・なぜそもそも野生オオカミの群れに入るなんてことをしようと思ったのか???という読者の疑問に対しては、全体を通して自分自身の孤独な生い立ちとオオカミの群れの生態を重ねることである程度答えているけど、肝心の野生オオカミの群れの中での暮らしについての記述がどうもあいまいで、信憑性に欠けるし、そこからオオカミについてどんな新しい科学的知識が得られたのかということはほとんど書かれていない。せっかく他の誰も真似のできない貴重な体験をしたのに、結果的に単なる奇人伝、自慢話になってしまっているのが残念。狼男の本としては面白いけど、オオカミの本としては物足らない。そのくらいオオカミになりきって、理性を捨てないと狼の群れには迎え入れてもらえないということなのかもしれないが・・・・。ぜひ野生オオカミとの暮らしについて改めてもう一冊書いて欲しい。
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by mobydick67 | 2013-03-01 12:07 | | Comments(0)