カテゴリ:映画( 23 )

ヘルツォークの山岳ドキュメンタリーと・・・

「輝く峰 ガッシャ―ブルム」
「バケのカムバック」

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メゾンエルメス10Fのル・ステュディオで上映中(土日祝のみ、要予約)


「輝く峰 ガッシャ―ブルム」はヘルツォークがメスナーのガッシャ―ブルム山行を撮ったドキュメンタリー。ただし、74年のペーター・ハベラ―との8000m峰へのアルパインスタイルでの世界発登頂、無酸素初登頂時の記録ではなく、84年のハンス・カラマンダーとの再登頂、Ⅰ、Ⅱ峰縦走時の記録。ヘルツォークはベースキャンプまでしか随行していないので、主にベースキャンプまでの道中とベースキャンプでのメスナーへのインタビューで構成されている。肝心のベースキャンプ以降は、メスナーとカラマンダーに預けたカメラによるわずかな記録しかなく、手に汗握るようなアルパインシーンは全然ない。そういう意味では以前ここにも書いたヘルツォークの「彼方へ」というへんてこな山岳非ドキュメンタリー映画同様、山岳映画としては何か物足りないぼんやりとした印象の映画。そしてここでもまた、平凡な「巨匠」ヘルツォークは、他の映画で怪優クラウン・キンスキーとの関係同様、怪人、奇人、超人、お化けのメスナーに煙にまかれ、すっかりのまれていて、映画全体をはじけるメスナー節が覆い尽くしている。見ているうちにメスナーの顔がクラウン・キンスキーに見えてくるから不思議。

もう一本、『バケのカムバック』という併映の短編が実は秀作。パケという年老いた登山家がかつてのガストン・レビュファとのミディ南壁初登頂を思い出しながら、若い登山家と共に再訪、再登頂する姿を撮ったファンタジックで牧歌的なドキュメンタリー。監督は「音のない世界で」で、聴覚障害のある子供たちが、音に触れ、音楽を獲得していく過程に寄り添った秀逸なドキュメンタリーを撮ったニコラ・フィリベール。在りし日のレビュファのコミカルな記録映像や、登攀中のビレイ時に通りがかった(登りがかった?)トシオ・サトウという日本人クライマーとのユーモアに満ちた会話が挟み込まれている。山と記憶の根源的な関係に迫った美しい一編。(どこのだれだか知らないけれどトシオさん、この映画のこと知ってるかな?)週末の楽しい山歩きのあとで、一日を締めるのに最適な1本かもしれない。


山、歩きたいな・・・
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by mobydick67 | 2013-03-09 15:25 | 映画 | Comments(0)

銀座 三原橋 シネパトス

銀座のはずれにある古い映画館が3月末で閉館になる。

銀座 三原橋地下 シネパトス

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東京に出てきた80年代半ばからすでにあったけど、45年も前からあったとは知らなかった。当時は確か2スクリーンだけだったような記憶があるが現在は3スクリーン。ここでしかロードショー公開されないB級作品を昔はよく見に来た。イーストウッド大先生の『トゥルー・クライム』がここでひっそり単館ロードショーされたのももう随分昔のこと。今はないけど昔は大人のオモチャ屋が隣にあり、今でもある横のカレーコーナー三原で映画のついでにカレーもよく食べた。

なんとなく場末感漂う雰囲気が好きだった。

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最近あまりないネオンサイン。「ニューシネマパラダイス」(嫌いだけど)に見えないこともない。

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お正月は松竹本社のお膝元ということもあってか、連日寅さんがかかってた。

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今は館外に歴代の舞台挨拶に来た人々の色紙が外に飾られている。

60年代、性と永続革命

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70年代の青春。

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80年代、性春の2大巨匠。ナイスですねえ。

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ちょっと寂しい・・・・
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by mobydick67 | 2013-03-04 18:28 | 映画 | Comments(4)

サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ・・・・

「カリフォルニア・ドールズ」 ロバート・アルドリッチ監督




この映画は中学生の頃、劇場公開時に広島、流川のOS東劇かリッツで見ている。併映が何か忘れたけど確か2本立てで、こちらが目当てではなかったはず。その後吹き替え版だと思うがテレビ放映で再見するまで、最後の決勝戦でドールズが戦う相手がミミ萩原らが扮する日本人レスラーだと思い込んでいたくらいで、中学生当時はおそらく金髪のおねえさんがおっぱいを揺らしながら奮闘するお色気映画程度にしか思っていなかったのかもしれない。その後大学に入ってから、蓮實重彦大先生がアルドリッチを持ち上げていたり、そもそもヌーベルバーグの監督達もベタボメしていると知り、そうかあのお色気映画の監督ってすごいのか・・・と他の監督作も当時はまだたくさんあった名画座や大学の上映会、アテネ・フランセなんかで見て、そうか確かにすごい!とぞっこんになったけど、なぜかこの「カリフォルニア・ドールズ」は劇場で再見する機会がなかった。それを約30年後に再び小さなスクリーン上で見ることができた。

いやあ、大きいなあ、アルドリッチ。巨大。監督本人も実際に巨躯だったらしいけどとにかく大きい。余裕綽々。なんでもあり。金のためなら女を泥まみれにするピーター・フォーク扮するマネージャーも、女の顔に泥を塗られたらだまっちゃいない。その上女に借りた金で賭場で大儲けして、その金でやることもでかい。女も大きいのはおっぱいだけじゃない。勝負の為なら進んで泥を被る。みんな、すべてが大きい。寒々しい曇天下のドサ廻りからネオンギラギラの大舞台へ。いいじゃないか。やっぱり傑作。


この映画を上映中の渋谷のミニシアター、シアターNはこの作品を最後に閉館。あとに別の映画館が入るという話もないらしい。どうもデジタルシネマへの移行という世の流れへの対応に苦慮してのことらしい。100年以上続いたフィルムというメディアからシリコン(?)への移行期のまっただなかにある現在、VPFを始めとする業界全体の新制度はミニシアターには厳しいようだ。ちなみに今回の上映は35mmフィルムによるもの。フィルムのほうがシリコンよりも優れているとは思わないので基本的に移行自体には賛成だけど、フィルムも一つのフォーマットとして残って欲しい。でもゲージュツとはいいつつ、みなさんメシのタネですからね・・・・

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実は、この同じ場所に今の劇場が入る前にあったユーロスペース(現在同じ渋谷の円山町で営業中)でかれこれ20年以上前、学生の頃、3年半ほどアルバイトで映写技師をしてました。当時はまだ1スクリーンで受付の女の子と二人で受付、もぎり、物販もやってました。映写機も長尺のかからないもので、1巻ごとに手動で切り換え。失敗もたくさんしたけど楽しかった。そんな理由もあって、ここで中学生の頃見た「カリフォルニア・ドールズ」を再見し、この作品を最後にあるミニシアターがなくなるというのは個人的にも感慨ひとしお。というか言葉で言い表せないものがあります。
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by mobydick67 | 2012-11-28 12:12 | 映画 | Comments(0)

さよなら、若松孝二



若松孝二が逝ってしまったのは、日本映画の周縁部に永久に埋まることない巨大な穴がぽっかりと空いてしまったようでとても寂い。

東京国際映画祭でも急遽追悼上映プログラムが組まれ、実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 が本日(ではなく正確には昨晩)上映されたけど、すくなくともこの作品は若松孝二の撮った映画のなかでは(もろん全部見ているわけではないけど)おせじにも出来の良いものとはいえないし、英語字幕のある作品でなければならないとか、素材調達の問題から上映できる作品が限られるといった色々な事情があるにせよ、もうちょっとなんとかならなかったのかという残念な気持ちが残る。

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せめて、餌食 とか上映して欲しかった。
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by mobydick67 | 2012-10-27 03:12 | 映画 | Comments(0)

さよならホタテマン



嗚呼!おんなたち猥歌 [DVD]

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内田裕也演じる売れないロック歌手のマネージャー役。内田裕也のダメ男ぶりとともにあまりにリアルでコミカル。コミカルだけどなぜかカッコいい。神代辰巳のセミドキュメンタリータッチの演出も冴える傑作。転がり出して止まらない物語のなかで、いかつい体を持て余す男。名演でした。さよなら、ホタテマン。
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by mobydick67 | 2012-04-12 20:00 | 映画 | Comments(0)

神代辰巳のえんやーとっと

少し前、長谷川和彦が「青春の蹉跌」の上映後のトークで、面白いことを言っていたので備忘録として記しておく。

神代辰巳の映画はたいていアフレコだが、アフレコの際に神代辰巳は撮影時に俳優が脚本(この場合だと長谷川和彦の脚本)に従って喋っていたのとは全然違うセリフや呪文のようなもの(この作品の場合だとショーケンの「えんやーとっとえんやとっと」という呟き)をアテてしまう。当然出来上がった映画はリップシンク(俳優の口の動きとセリフの同期)がデタラメになってしまう。で、長谷川和彦が神代辰巳に「クマさん、ぜんぜん絵と音があってないけどいいの?」と訊くと、「別にあってなくていいじゃん」と答えたという。

他の「一条さゆり 濡れた欲情」や「恋人たちは濡れた 」でも同じよう手法が使われていて、あの訳のわからない呟きようなものは何なのかこれまで気にはなっていたが、手元の神代辰巳オリジナルシナリオ集を見ても脚本にはそのようなセリフは記されていない。それが、神代辰巳によるアフレコで映画をもう一度作り直す行為だという長谷川和彦の指摘はとても鋭い。


話はとぶが菊池成孔が「アフロ・ディズニー エイゼンシュテインから「オタク=黒人」まで」と「アフロ・ディズニー2 MJ没後の世界」のなかで、『ミッキーマウシング』という言葉や、エイゼンシュテイン、ファッションショーの音楽とモデルの動き、韓ドラの吹き替えなどを挙げて映像と音の同期、不同期について論じていて、なんだか面白いことを言っているのはわかったけど、とっちらかってしまって結局何が言いたいのかさっぱりわからなかったが、先日の長谷川和彦の神代辰巳に関する逸話を聞いて菊地成孔が言いたかったのはそういうことなのかもしれないと思い出した。菊地成孔的に言えば、神代辰巳の映画では、撮影した映像に映像と必ずしも噛みあっていないアフレコというレイヤーを重ねて齟齬を生み出すことで、異化作用によってまったく別の、例えば意識の流れのようなものが観るもののなかで映像と統合される、ということになるのかな。でもこれを「べつにあってなくていいじゃん」の一言で済ませて、実際に作品にしてしまう、神代辰巳の奔放さはすごい。

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余計なことだが、菊地成孔も理論武装ばかりしていないで、実作のほうでもっとはじけて欲しいと思うが・・・・無理か。
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by mobydick67 | 2011-10-15 15:24 | 映画 | Comments(0)

GET LOUD AND LOUD AND LOUD AND・・・・・

GET LOUD

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冒頭。WHITE STRIPESのジャック・ホワイトが牧場のようなところの屋外で、金槌で何か作っている。板きれに針金を一本張って、コーラの瓶を挟み、ピックアップをつけて、アンプにつなげ、ボトルネックでこする・・・・かっこいい。

映画は、ジャック・ホワイト、エッジ、ジミー・ペイジの三人がそれぞれの視点からギターを通じてロックというの大きな流れの何かを掴もうとしている。その流れの底流にはおそらくBLUSEがあるはずだ。個人的にはこの三人が特別好きなわけではないし、どちらかというと好きになれない人も含まれていたりするけど、それでも映画は十分楽しめた。ジャック・ホワイトが冒頭で作ったギターの音には本当に痺れた。



森の中からジャズが聞こえる―パット・メセニーのギターを作る

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パット・メセニーのギターを作っている女性へのインタビューを本にしたもの。タイトルはちょっと変だけど、絶版になっているのが残念な素晴らしい本。ギターは弾けないが、ギターを作ることには憧れる。随分昔に、ウクレレのキットを買ってきて作ったことがあったが、色(黄色)を厚く塗っているうちに素人耳にもひどい音になっていくのがわかりがっかりした。
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by mobydick67 | 2011-09-16 20:18 | 映画 | Comments(0)

Ballad of A Thin Man

先日観たフルジャノスキーの「グラス・ハーモニカ」は1968年作。

同じ頃にカナダにも音楽に触発された素晴らしいアニメーションを作るライアン・ラーキンという作家がいた。

「シランクス」(1965年)


ドビュシーの曲に着想を得た、アニメショーンでしか表現できない時間。これも生演奏で楽しみたい一作。


「ウォーキング」(1968年)


ただ、いろんな人が歩いたり、走ったり、踊ったりするところを描いただけ。ただそれだけなのにこんなに自由で多彩な表現が可能なのかと驚かされる。画面から飛び出してきそうな躍動感は、3Dなんておよびじゃない。

「ストリート・ミュージック」(1972年)


迸るイマジネーション。天才としかいいようがない。いつ見てもこのままずっと見ていたい、終わって欲しくないといと思う。


こんな素晴らしい作品を作りながらもこのあとスランプに陥って不遇な時期を過ごしたラーキン・・・


ライアン・ラーキン やせっぽちのバラード

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ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション [DVD]

創るということの業を感じさせるアーティストの一人。
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by mobydick67 | 2011-09-04 18:27 | 映画 | Comments(0)

新宿心中

原田芳雄さんが亡くなりました

私にとって彼の最高傑作は若松孝二監督の「われに撃つ用意あり」です。若かりし頃の因縁と国際化の軋みが生み出した暴力性を90年代の猥雑な新宿で交錯させてみせた傑作。狭い新宿の街を息を切らせながら走り回る原田芳雄の姿をもう一度銀幕の上で見てみたいものです。できれば新宿のシネコンではない映画館で。

新宿心中/天然色


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15年くらいまえに新宿花園神社のテントであったある映画の試写会後の打ち上げの席で、上のCDにサインをいただき、少し話をさせていただいたことは大切な思い出です。

もういちどBLUES、歌ってください・・・・
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by mobydick67 | 2011-07-20 18:24 | 映画 | Comments(0)

芋虫

先日、これまた一足早く若松孝二の話題の新作「キャタピラー」を見た。

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意外に凡庸な反戦映画で少々肩透かしをくらったが、相変わらずの若松節、なかなか面白い。軍歌、日章旗、蚊帳などいつもの小道具も満載。

ガキの頃お祭りにいくとああゆうカッコした傷痍軍人がゴザ広げてひっくり返した軍帽の後ろに座っていたのを思い出した・・・
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by mobydick67 | 2010-07-14 23:21 | 映画 | Comments(2)