人気ブログランキング | 話題のタグを見る

遭難大全として



奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」

遭難大全として_f0194599_2150826.jpg



古今東西のありとあらゆる極限的体験を集めた本。宗教的修行、9.11テロ、戦争、シャクルトンをはじめとする極地探検、メスナーらによる高所登山、クライミング、冒険的航海や飛行、海洋遭難など多様な例を挙げて、人間が絶体絶命の窮地に陥った際に現れて力を与えてくれるという「サードマン」とは一体何かということを考察している。邦題を見ると、神の存在とかそういうこと言い始めそうないかがわしい本か?と勘違いしそうになるが、あくまで、人の脳はそんなものをいったいなぜ、どうやって作り出してしまうのかということを科学的アプローチで探っている。ただ、結局結論ははっきりせず(例えばそのような作用をもたらすものとして、例えばエンドルフィンやアドレナリンといった具体的な体内物質がつきとめられているわけではない)、人間の脳がもつ潜在的な生存能力の一つとして肯定的に評価するに留まっているのはなんだかすっきりとしないが、あらゆる極限的サバイバル談を集めた遭難大全としてはとても面白い。本編では日本人の例は挙げられていないが、訳者あとがきで山野井泰史さんのチョ・オユー登攀や、松田宏也さんのミニヤコンカでの壮絶な生還体験にも触れられている。
by mobydick67 | 2011-03-03 21:51 |
<< 必ず戻る 雪が融けてしまう前に >>